コンピュータは量子力学の夢を見るか

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photo credit: Schrödinger Equation via photopin (license)

 

量子力学というと、どのような印象があるでしょうか。

原子や粒子についての難しい学問だという印象を持つ人がほとんどでしょうが、現代社会を支えるとても重要な知識なのです。
例えば、原子力発電はウランの核分裂で発生する熱エネルギーで発電するしくみですが、放射能や核廃棄物という問題もあります。
また、いまや誰でも使っているコンピュータのチップに使われている半導体も、量子力学の知識を使って作られています。
そして、生物のしくみさえも、量子力学が関係していることが最近になってわかってきています。

では、量子力学とはどういうものでしょうか。
量子力学とは、原子核や電子など物質の基本となるもののふるまいを研究する学問です。
一方、量子力学以前の物理学はニュートン物理学ともいわれていて、中学や高校で習ったように私たちの身の回りの現象を、説明するための学問です。
例えば、物を高いところから落とすと、数秒後にはどれくらいの距離を落ちて、速度はどれくらいになるかを予測するといった感じです。
しかし、量子力学は私たちが、日々体験している世界とはまったく違う世界を垣間見せてくれます。
では、量子力学が見せる原子の世界は、どうなっているのでしょうか。

 

  • 粒子性と波動性

量子力学では、量子は波の性質と粒子の性質を持っている、と考えられています。
下の図にあるように、光をスリットのあいた板を通して壁にあてると、縞模様が壁に出てきます。
これはスリットから出た光の波が干渉しあって、光の強い部分と弱い部分が交互に模様として現れたためです。

また、光の粒子性を示す現象として光電効果というのがあります。
下の図のように、原子に光が当たると電子が飛び出てくることが、実験により確認されています。
これは光がビリヤードの玉のように粒子になっていて、粒子同士がぶつかると反動で粒子が飛び出してくるためであると考えられます。

このように、量子は波でもあり粒子でもあるというのが、とても不思議ですよね。

 

  • 量子もつれ

通常、距離の離れたもの同士が、なんらかのやりとりをしようとすると時間がかかります。
今のところ、光の速さが一番速いとされていますが、それでも月と地球の間で通信しようとすると、1.3秒かかります。
しかし、量子もつれという状態にある二つの粒子は、どれだけ離れていても片方の影響が瞬時にもう片方の粒子に伝わります。
あたかも、離ればなれの二つの粒子が一体となっている感じです。

 

  • 量子重ね合わせ

私たちの世界では、あるものの状態は一つに確定されます。
例えば、コインを投げると裏か表を上にして落ちますし、さいころをふると1から6のどれかの数字になります。
しかし、量子の世界では2つ以上の状態を同時に持つことができます。
それは、裏でもあり表でもあるコインや、1から6同時に出るさいころのようなものです。
これを量子の重ね合わせ現象といいます。
あまりに直観に反する現象ですね。

 

  • 不確定性原理
私たちの日常の世界では、物の位置と速度は正確に測定することができます。
だから、飛行機は毎日時間通りに飛ぶことができますし、だれかと待ち合わせの約束をして会うことができます。
しかし、原子レベルのミクロの世界では、位置と速度(正確には運動量ですが)は両方正確には測定不可能なのです。
これは不確定性原理と呼ばれる法則で、ドイツのウェルナーハイゼンベルグが考えた有名な理論です。
これはよく、測定することによって観測対象に干渉してしまうためだと誤解されていることが多いのですが、そうではなく量子の基本的な性質として提唱されている考え方です。

 

これらの特性を持つ量子の世界は、私たちの普段生活している世界とはあまりにもかけ離れているので、理解が難しいですよね。
私が最初に量子力学に興味をもったのは、学生のころアインシュタインの相対性原理を知ったときだったのですが、そのときは原子力発電や原爆など破壊的なイメージがあって、またアインシュタインが批判していたのもあり、量子力学にあまりいい印象をもっていませんでした。

しかし、「量子力学で生命の謎を解く」という本を最近読んで、量子力学の印象ががらりと変わりました。
この本では、コマドリの磁気を感じる能力や酵素の働き、光合成や生命が発生したしくみなどは全て量子力学的な働きが関与していることがわかってきたことを解説しています。
この本を読んで、量子力学ってとても自然な現象を扱っているんだということがわかって、再び興味を持てるようになりました。
私たちの世界を構成している原子の仕組みを扱っているのですから当たり前なのですが、今まで原発や原爆のイメージが強すぎて人工的な印象を与えていたのでしょうね。
 
そして、量子力学が生物やコンピュータ、宇宙開発などに応用されていくといろんな問題が解決されると考えられています。
例えば、医学ではMRIという検査装置で、すでに量子力学の技術が使われていますが、がんや難病が解明されて画期的な治療法が出てくる可能性がありますし、臓器や体の一部が欠損した場合に復元できるようになるかもしれません。
また、コンピュータの世界では量子コンピュータによって、より強力なコンピュータが安価で小さいサイズで実現できる可能性があります。
なにより、生命はどのように発生したのかとか死とは何かという人類がずっと疑問に思ってきたことが解明されるかもしれません。

 

現代社会はコンピューターや原子力発電所など量子力学でわかったことのほんの少ししか利用できていません。
よく考えると、現代社会ではいまだに石油や天然ガスなどの化石燃料を燃やしてエネルギーを作り出しています。
一方、自然は太陽では核融合を行っていますし、植物は光合成でエネルギーを作り出しています。
これらは全て量子力学が関連する領域なんですよね。
なので、これからはもっと量子力学的な考え方がいろんなところで必要になると思われます。
したがって、21世紀の教養として量子力学は学んでおくべき知識だと思います。

 

この本を読んでこのブログを書こうと思ったくらい今年一番に感動した本です。
ほとんど数式も出てこないので、興味のある方はぜひ読んでみて下さい。
 
Googleが量子コンピュータを買った話は有名ですが、近い将来量子コンピュータは実用化されると思われます。
ITエンジニアとしてはウォッチしておきたい技術ですね。

まずはお手軽に量子力学を知るには、この本あたりからがいいかもしれません。


ほとんど数式が出てこないので、ビジネス書みたいに読めるのがいいですね。

量子力学の歴史的経緯を知るには、こちらがいいと思います。

高校生以来、さびついた物理の知識をリフレッシュすることから、はじめてはどうでしょうか。