ポスト資本主義は腐る経済?

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photo credit: St. Jean Then & Now – IMGP6714 via photopin (license)


先日の記事
では資本主義について書いたあと、他の本を読んだり考えてみて、視野の狭いところで考えていたのではないかとふと思いました。
つまり、資本主義という枠で考えると、解決できない状況になっているのではないかということです。

私たちは資本主義社会で日々生きています。
でも、資本主義とは何かを明確に答えられる人は意外に少ないのではないでしょうか。
Wikipediaによると「資本の運動が社会のあらゆる基本原理となり、利潤や余剰価値を生む体制」だそうです。
また、マルクスは資本論の中で、「生産手段が少数の資本家に集中し、一方で自分の労働力を売るしか生活手段がない多数の労働者が存在する生産様式」と定義しています。
簡単に言うと、みんなで働いて生み出した余分な価値を企業や投資家が取るという体制ですね。
その結果、労働しか売るものがない人たちはいつまでも貧乏で、企業や投資家はいよいよ豊かになるという結果になります。
そして、資本主義では貧富の格差は必然的に起こってしまいます。

また、企業は利潤を最大化しようとしますので、収入を増やし支出を減らそうとします。
そうすると働く人たちは長時間働かされ、非正規雇用やアルバイトで人件費を削減しょうとします。
働く人々の中でも利に聡い人は、過酷な労働を嫌って資本家の側に回って搾取する側に入ろうとするでしょう。
その結果、先進国で製造業が衰退し、金融業が台頭してくるのは自然の流れなのです。
ソニーが典型的な会社で、いまや金融サービスの売り上げのほうが家電製品の売り上げよりも多くなっています。
こうなると、まともに仕事をするよりもマネーゲームで資産を増やそうとする人が増えていきます。

また、大航海時代からはじまった株式会社という仕組みも時代に合わなくなっています。
もともと株式会社は、リスクの高い多額の資金が必要な事業を行うために、広く資金を募って成功報酬として利益を分配するしくみでした。
こしょうなどの商品を船でアジアからヨーロッパに運んだ東インド会社が株式会社の元祖として有名です。
しかし、今はあらゆるものがコモディティ化し、先進国はすでにインフラが過剰な状態になってきているので、投資機会がかなり減ってしまいました。
そもそも株式会社は、アジアへの航海という当時としては非常にリスクの高いビジネスのために考え出された仕組みでした。
そういう出自にもかかわらず、ゴーイングコンサーン(企業継続)を前提とする現代の株式会社は矛盾をかかえているのかもしれません。
そして、経済成長がない現代では、株式会社の存在意義はなくなってきているということではないでしょうか。

「資本主義の終焉と歴史の危機」という本をかなり前に読んだのですが、今話題になっているそうです。
この本では、もう経済成長できるフロンティアはなくなりつつあるので、資本主義も同時に衰退していくと書かれています。
確かに、どこの先進国でも労働者の給料は減り、資産を持つ人たちとの貧富の格差は広がっていて、金融危機が頻繁に起こるようになりました。
BRICS諸国でも、すでに経済成長が減速していて、中国が結構やばそうな雰囲気です。
こういう状況を見ていて、私は資本主義は実質的には終わる方向なのではないかと前々から感じていました。
では、次のしくみはどういうものかというのが全く見当がつかなかったのですが、「田舎のパン屋が見つけた腐る経済」という本を読んで、次はこれではないかと思いました。

「田舎のパン屋が見つけた腐る経済」は、岡山県の山の中の町でやっているパン屋さんの話なのですが、経営している方が経済学者の息子さんであり、蟹工船さながらのパン業界で苦労された経験があるだけに説得力があります。
そしておもしろいのは、彼の営むパン屋さんは、利潤を取らないことです。
利潤とは、売り上げから働いた人の給料や材料費、機械の購入費などを引いた後に残ったお金で、新しい店舗や工場を作るため、そして出資者に配当するために必要です。
しかし、利潤を企業が確保すると、働く人たちから搾取することになり、また農作物を提供してくれる農家の人から買いたたいて仕入れなければいけなくなります。
このパン屋さんでは、不労所得者が儲かるのではなく、ちゃんと労働して価値を提供している人たちにまっとうな報酬を払いたいということで利潤を取らないようにしているとのことです。

また、このパン屋さんは天然酵母や麹菌を使ってパンを作っているのですが、酵母菌や麹菌は自分で作り、小麦は近くの農家から買って、自前の機械で製粉しているそうです。
なぜそんな面倒なことをするかというと、いまや小麦やコメなどは投資の対象になっていて、もろに金融危機の影響を受けて価格が高騰してしまうからだそうです。
マルクスの資本論でも、労働者が搾取されるのは生産手段を持たず労働力しか売るものがないからだと書かれています。
資本主義に対抗するためには、生産手段を持つことは必須の条件なのでしょうね。

このパン屋さんの話を聞いていると、ポスト資本主義は規模は大きくしないで、共同組合のような形で運営し、自然のサイクルのように、定常的な経済で回すシステムなのだと思います。
著者は腐る経済と言っていますが、資本主義ではお金は腐らず永遠に増殖していきます。
そして、お金が増殖するために働く人たちから搾取しなければいけません。
そうではなく、お金も自然物と同じように土に帰っていくべきなのだと思います。
それは、かつての共産主義のような国が統制する社会ではなく、働く人が人間的な生活を送れる社会を実現してくれるのではないでしょうか。

この田舎のパン屋さんのように、資本主義ではない経済で生きていくほうがこれからはよさそうです。