会社を丸裸にする

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photo credit: Balance Sheet via photopin (license)

今や日本で働く人たちの9割はサラリーマンだそうです。
サラリーマンは源泉徴収なので自分で確定申告することもありませんし、会社の決算書を見ることもほとんどないでしょう。
経営者ですら経理は税理士に丸投げでバランスシートの見方も知らない社長は結構います。
しかし、決算書はどんなニュースよりも会社の実態を知る上では確かな情報です。
会社だけでなく、企業活動を基本とする資本主義社会がどうなっているかを知る上でも重要な情報となります。

「会計士は見た」という本は、話題になった企業の決算書を解説してなぜそうなったかを説明してくれるいい会計本です。

まず、最初の会社はソニーです。
ソニーといえばテレビやオーディオ製品を作っている会社と思っている人が多いと思いますが、いまやソニー銀行やソニー生命など金融関連子会社の利益のほうが製造業部門より多いのです。
ソニーは2000年ころから製造業に見切りをつけたようで、それ以降金融業への投資を増やしています。
大企業にはやはり頭のいい人がたくさんいるのでしょうね。
ただ、創業者の井深さんや盛田さんが作ったソニーとは別の会社になりつつあります。
長期的にこの業態変更がソニーにとっていいのかどうか、どうなんでしょうね。

次に印象的だったのが、大塚家具です。
父と娘の主導権争いで有名になった会社ですが、ニュースで見ていると単なる親子けんかのように見えますが、実は時代の変化を象徴する事件だったのです。
創業者の父は昔気質のたたき上げの人です。
だから、人を大事にして社員もほとんど正社員で不景気なときでもリストラしませんでした。
しかし、娘はMBAを学んだエリートなので、会社をリストラし非正規労働者でコストを削減しようとします。
結局、株主総会では娘の現代的な経営が選択されて創業者は代表取締役を解任されます。
利益がなかなか上がらない状況でコストの高い人件費をなんとかしろと株主から言われたんでしょうね。
それに創業者はかたくなに反対したのでしょう。
私はこれを読んで、大塚のおやじさんは本当にいい人だなと思いました。
また、彼が成功できたのは従業員を大切にしたからという信念があったからなのだと思います。
確かに、リストラして非正規社員で会社を回すほうが利益はあげやすいでしょう。
しかし、長期的に考えると大塚のおやじさんの考え方のほうが私は正しいのではないかと思います。
非正規社員は自分が使い捨てだと知っています。
そんなシグナルを発信している企業で情熱をもって働けるでしょうか。
特に大塚家具のような高級家具を専門にしていると、社員が自分の売っている商品にこだわりがないとなかなか売れないと思います。
私は昔、BMWのショールームに行ったことがあるのですが、売っている人はBMWが大好きでもちろん自分でも乗っているという人でした。
そのBMWのセールスマンはBMWについて話すときは本当に楽しそうでしたね。
そういう会社のほうが、長期的には残っていくんじゃないかなと思います。

キーエンスという会社はあまり有名ではないですが、とてもおもしろい会社です。
この会社は電子部品の製造、販売を行っていますが、自分で工場は持っていません。
ファブレス企業と呼ばれていて、設計やマーケティングが主な業務になります。
通常、製造業は工場や機械など巨額の設備投資が必要です。
しかし、この会社は製造はほとんど外部に委託して、設備投資はほとんど行ってません。
それよりも、営業活動に注力して、請負というより顧客に提案して仕事を取ってくるという営業スタイルです。
そして、利益の多くを社員の給料として支払っています。
なので、勤続10年くらいで年収1000万円くらいもらっている社員が結構います。
一方で役員報酬は少なく2000万円台になっています。
お金のある企業は企業買収や新規投資をしようとしますが、この会社はそういうことは一切やりません。
この会社の決算書を見ると、この会社の経営者は社員を大事にしていることがよくわかります。
どこぞのITベンチャーの経営者に爪の垢を煎じて飲ませたいですね。(笑)
こういう会社はニュースでは取り上げられることがない地味な会社ですが、日本の宝ともいえる会社だと思いますね。

資本主義社会では、私たちは生きるために企業で働いてお金を稼がなければいけません。
しかし、その企業がどう運営されているか理解している人はかなり少ないのではないでしょうか。
でも、決算書を見るだけでかなりのことがわかるようになるので、とてもお得感のあるスキルです。

しかし、決算書を見ると、企業は利潤を生みだすことが目的であるように思えますが、はたしてそうなのでしょうか。
新たな投資機会があり経済が成長していれば利潤は再投資されて、さらに経済が活性化されます。
しかし、日本のようにもう経済成長しなくなった社会では、むやみに利潤を追求してもあまりみんなが幸せになれるとは思えません。
これからは、企業は利益だけではなく、かかわる人たちが幸せになるために運営されるべきではないでしょうか。
つまり、お客さんにメリットを提供することはもちろん、働く人たちがやりがいをもって働けて社会にいい影響を与えることこそがこれからの企業のミッションだと思います。

「会計士は見た」はほとんど前提知識がなくても読めるのでおすすめです。

決算書を読むのはそんなに難しくありません。
軽い気持ちで気になる会社の決算書を読んでみてはいかがでしょうか。

ソニーはこれからどうなるんでしょうね。

日本にはこんな会社があったのかと目からウロコです。
会社っていろんな形があっていいのかもしれません。

貸借対照表がどのように生まれて発展してきたか、歴史的経緯がわかる好著です。