日本をダメにした10の裁判

日本をダメにした10の裁判 (日経プレミアシリーズ 4) (日経プレミアシリーズ 4) 日本をダメにした10の裁判 (日経プレミアシリーズ 4) (日経プレミアシリーズ 4)
チームJ

日本経済新聞出版社 2008-05-09
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日本では普通の人が裁判に関わることは少ないかもしれません。

アメリカに比べて日本は以心伝心というかすり合わせの文化というのがあってあまり争うという気質が少ないからなのでしょう。

しかし、社会が複雑になってくると解決するために裁判に頼らざるを得ない場合が増えてきます。

この本はそんな法律にあまり詳しくない方でも今の日本の司法組織の問題点を具体例をあげてわかりやすく説明しています。

最初の例は正社員になれない人がなぜ増えたかについてです。

日本の企業では一度雇った人を解雇するのは難しいとされています。

しかし、日本ではそのような法律はありません。

それは解雇に関わる裁判でほとんどの企業が負けているからです。

裁判では判例主義といって法律以外にも以前出された似た裁判の判決を重要視します。

その判決の積み重ねが企業が解雇をしにくくする状況を生み出しました。

裁判官も人間ですから解雇された人を不憫だと思ったのでしょう。

しかし、その結果どうなったかというと企業は派遣などの非正社員を使って雇用調整をしました。

そして日雇い派遣や若者が正社員になれないなどの問題が出てきました。

また、正社員でも使えない人は子会社などに出向させるなど実質解雇のような扱いをしているところもあります。

子会社に出向させられた偉いさんも自分は出世コースからはずれたと思ってやる気をなくす人も結構いました。

そんな会社はいっぱいありますが、日本の経済にどれだけ悪影響を与えているのか考えてしまいます。

自分も裁判に関わったことが少しありますが、法曹界の人たちを見ていて思うのは一般社会とかなりずれているなということでした。

裁判官になるためには若い頃から一生懸命勉強していい学校にいかないとなれないのでしょう。

しかし、企業を経営するということがどれだけ大変か経験したことのない裁判官がはたして雇用に関して正しい判断ができるのか疑問です。

裁判所ももう少し民間出身の人を裁判官として採用してもいいのではないかと思います。

また、司法の考え方があまりにも硬直化しているのも問題です。

裁判は判例主義だといいましたが、元となる判例が出てから時間がたって世の中は大きく変化しています。

例えば、何十年も前であれば終身雇用が当たり前で雇用を守ることは重要だったでしょうが、今のように人が働ける年数よりも企業の寿命が短くなってきている現代ではかえっていろんな問題が出てきます。

このような状況ではもう少し解雇できる条件を緩めて人材が流動化するような法律に変えたほうが時代にあっていると思います。

近代国家として法律が早くに整備されたイギリスでは選挙の定数是正の問題では人々が都市に多く住むようになった現状合わせて選挙制度を改めました。

それに比べ今の日本は未だに一票の重みが4倍までだったら合憲なんていうナンセンスな判決がまかり通っています。

イギリス人は法律の限界を知っていて現状に合わなくなったら変えていかなければいけないということを理解しているのだと思います。

そういう点では日本の司法制度の成熟度はまだまだ低いということなのでしょう。

私も裁判に関わって思うのは司法というのは民主主義の最後の砦だということです。

理不尽なことがあっても最後は裁判で良識ある判断が行われるから安心して暮らせるのだと思います。

それが信頼できないとなると生きていくのは結構大変です。

来年から裁判員制度が開始されますが、もっと多くの人が司法に関わっていくべきだと思います。

一部の専門家に全てまかせるのではなく、やはり市民が関心をもってチェックしていくということが日本の司法を成熟させていくために必要なことではないでしょうか。

そんなことを色々考えさせれるとてもいい本でした。

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