近未来CEO物語

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(またもや妄想が暴走しています(笑)。ちょっと長めですがよかったらおつきあいください。)

 今は2057年。

私は民主会社のCEOだ。

民主会社という言葉は2007年の方はご存じないと思うが、簡単にいうと会社と組合がいっしょになったような組織形態とでもいえばいいだろうか。

 民主会社という組織は株式会社の非効率さや企業犯罪の多さの反省から考え出されたものである。

株式会社は株主が所有者であり出資した額によって支配力が決まる仕組みである。

したがって発行株式の過半数を獲得できれば誰でも企業を売却したり経営者を変えたりすることができる。

一方民主会社は所有者は構成員である。

構成員とは民主会社に参加費を一定額支払って参加してビジネスを行っている組合員であり、パートナーと呼ばれている人々である。

民主会社のCEOはこれらパートナーの投票によって選出されるが、株式会社のように投資金額で支配力が変わることは無く平等に一票づつの権利をもつ。

したがってパートナーの利益につながるような働きをしないCEOは次の選挙で退任させられることになる。

 また株式会社は株主の利益を増やすために事業を行うが、民主会社はパートナーそれぞれが起業家であり、組織は彼らがスムースにビジネスを行える環境を作り出すことに最善の努力を行う。

名前からもわかるようにこの組織モデルは民主主義国家の政治システムを基本としている。

民主会社のミッションは次の三つの要素で構成されている。

 ひとつは資金調達である。

民主会社は参加費以外にパートナーから利益の何割かを預託金として預かっている。

この資金はパートナーの新規ビジネスに投資される。

投資対象となるプロジェクトはパートナーが自発的にグループを作って実行していく。

そして、投資したプロジェクトの収益を預託金の額にしたがってパートナーに配当するのである。

どのプロジェクトに投資するかは民主会社の代表パートナーと呼ばれる人々で構成される投資選定委員会で投票によって決定される。

そして、その選考状況は全パートナーにウェブ上でリアルタイムで公開されるのである。

 昔、投資ファンドと呼ばれたしくみがあったが、民主会社はパートナーのために投資ファンドをもっているようなものである。

このしくみによって銀行融資や株式などの古い資金調達方式にたよらなくてもよくなったため、パートナーは資金繰りの心配をする必要はなくなった。

 次は調整である。

民主会社はそれぞれの利害を調整し協力しあって大きな仕事ができるようになっている。

しかしまれに自分のことしか考えないパートナーもいるのだが、そういう人を除名する権限もCEOは持っている。

これはいやな役回りだが組織を維持するためには必要なことだ。

 そしてコミュニティ運営だ。

パートナーは民主会社内で一緒に仕事を行うパートナーを探す手助けを行う。

通常はバーチャル空間でのミーティングがほとんどなのだが、たまにパーティーを催したり、一緒に働くためのオフィスを提供したりなどいろんな対策を講じている。

これらの企画もCEOの重要な仕事なのだが、パーティーのホスト的なスキルが必要になるので私は最近ホテルの従業員研修を受けたりもしている。

 またパートナー同士でグループを作ってビジネスを行うことになるが、お互い仕事をしたい相手を選ぶことができるので能力の高い人たちが集まる傾向にある。

この点が一番株式会社に勝るところであろう。

 民主会社は分散型組織である。

かつての株式会社のようにCEOからトップダウンで命令する形ではなく、民主主義的にパートナーの投票によって物事が決定される。

これが可能になったのは2つの技術的なブレークスルーがあったからだと学者の間では言われている。

そのひとつが2000年初頭に起こったIT革命だ。

メールやウェブなどのコミュニケーション手段が普及することによってコミュニケーションコストがほぼ0になった。

これによって民主的な方法による意思決定がすばやくできるようになり、トップダウン的なピラミッド構造の組織が不要になった。

今では民主会社の運営は基本的にはコンピューター上で行われていて、私もほとんどの仕事は自宅からネットワーク経由で行っている。

 しかし、あらゆるビジネスを分散型組織で行うためにはさらなる技術のブレークスルーが必要だった。

それは2040年頃起こった製造プロセス革命だ。

この製造プロセス革命によって製造業も分散化組織で行うことが可能となった。

その主な要因はナノテク技術を駆使した分子製造マシーンが普及したことだった。

分子製造マシーンとは分子レベルで物質を組み立てる機械で、コンピューターで設計したデータに基づいて自動車から臓器まであらゆるものを作り出すことを可能にする機械である。

この機械によって製品をデータのように簡単にコピーすることができるようになり、製造コストをほぼ0にすることができるようになった。。

そしてかつて巨大な工場を建設しないとできなかったようなものも小さなオフィスで作れるようになったのである。

今では専門家が設計したデータをネットワーク経由で分子製造マシーンに送るだけで製品ができるようになっている。

 しかし、製造プロセス革命によって新たな問題がでてきた。

物質を簡単にコピーできるようになったため地球資源にとって大きな脅威となってきたのである。

地球の資源は有限だ。

その環境でみんなが分子製造マシーンを使い出すとあっというまに地球の資源は枯渇してしまうだろう。

そこで民主会社のあるパートナーが火星の資源を採掘するベンチャープロジェクトを進めている。

火星と地球の間にスペースシャトルを飛ばして火星の資源を地球に運ぶのである。

このプロジェクトではソフトウェア工学、ロケット工学、分子化学などのエキスパートが必要であるが、民主会社のパートナーによるプロジェクトチームによってすでに計画が進行している。

このようなプロジェクトは私が指示するのではなくパートナーたちが自発的にプロジェクトを立ち上げ実行していっている。

そして私はその環境を整えることだけを行うのである。

このプロジェクトには民主会社から多額の資金が投資されているが、成功すれば莫大な利益を生み出すであろう。

 来年の今頃には火星で完成パーティーを行う予定である。

とても楽しみだ。

参考文献

フューチャーオブワーク

創造する機械

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