電子立国はなぜ凋落したか

20年くらい前にNHKで「電子立国 日本の自叙伝」という番組をやっていました。
ちょうどそのころ自分も半導体工場関連のシステムに関わっていたのでとても興味深く見ていました。
その番組ではトランジスタが発明されて、集積回路に進化し、日本のメーカーが世界のマーケットを席巻する経緯を解説していました。

それから20年たって、現在の凋落ぶりはほとんどの人が想像できなかったでしょう。
ただ、私は日本の電機メーカーはいずれ衰退すると思っていました。
なぜならば、仕事でいろんな日本のメーカーと関わっていて時代と合わなくなっていると感じたからです。

最近出た「電子立国は、なぜ凋落したか」をたまたま本屋さんで見つけて読んだところ、20年前に自分が感じたことが明確にまとめられていました。
今回、ブログを書こうと思ったのは自分が関わったプロジェクトでこの本に書かれていることがあったなと思いだしたからです。
私がメーカーと関わったのはJapan As No 1と言われていた時期でしたが、繁栄の頂点にいるときにこそ凋落の前兆がはっきりと出てくるのでしょう。

私はあるメーカーのシステムのGUI部分のプログラムを受託開発していましたが、そのプログラムをメーカーの検査スタッフは画像を拡大するプログラムを使って人の目ではわからない部分までもチェックして修正を要求してきました。
それほど注文がうるさいわりにはお金は大したことはなくて、自社の営業はいつもメーカーは値切ってくると嘆いていました。
どうやら彼らは高品質はただで達成できると思い込んでいた感じでした。

また当時、日本のメーカーはソフトウェアはハードの付属物だと考えていました。
したがって、ソフトウェアは外注して下請け企業に作らせていました。
私が関わったあるプロジェクトでメーカーの担当者に「私達はソフトは作らないから」と言われたことがありましたが、そんなつまらない仕事は君たちがやることと言わんばかりの、人の仕事をばかにしたような言い方にこの企業の未来は暗いと感じたものでした。

また、日本のメーカーは製品が高品質だったら値段が高くても売れると思い込んでいたようです。
あるとき、メモリーを製造しているメーカーの人が韓国の同業他社の話をしていて、韓国メーカーは製造過程で検査をせず最後に検査して不良品を大量に捨てるから安くできるといって韓国メーカーをばかにしていました。
日本のメーカーは各工程で検査するので品質は高いですが、そのラインを作るのに莫大な費用がかっていました。
もう時代は安いパソコンのメモリーが主流の時代になっていたのに、そのようなコストの高い設備投資や運用をやっているとマーケットが変わると対応できないとは考えなかったようです。

もちろん世界がグローバル化して中国や韓国メーカーに仕事をとられたり、円高で価格競争力がなくなったという外部要因も衰退の原因の一つだと思います。
しかし、もともと日本メーカーは時代の変化に対応できないような組織構造になってしまっていたのが一番の衰退の原因だったのだと思います。

その組織構造になった原因は終身雇用/メンバーシップ型雇用と垂直統合の自前主義です。
メンバーシップ型雇用は新卒で雇って定年まで同じ会社で働くことになります。
そうすると長年同じような人たちだけで仕事をすることになり、周りの変化に気が付きにくくなっていきます。
また、垂直統合の自前主義とは設計から製造、販売まで全て自社で行うことです。
いまやAppleなどのように工場をもたないファブレスメーカーが増えている中、何でも自分たちだけでやろうとすると変化の速度に対応できなくなります。

シリコンバレーの企業で働く人は転職が当たり前ですし、企業買収も頻繁に行われますし、水平分業が進んでいるので他社と協業してビジネスを行うのが当たり前になっています。
その過程でいろんな人達が交流するので環境の変化に対応しやすくなります。
一方、日本の大企業は未だに終身雇用体制を守っています。
企業買収もあまり行わないし、自前主義で他社と協力するという文化がありません。
資金調達は銀行からの融資なのであまりリスクの高いビジネスは行えません。
なので、無難に今までの延長でビジネスをやっていれば経営者も安泰というぬるま湯状態が続いてしまったのが凋落の大きな原因だと思われます。

昨日、ソニーはまた赤字を計上したというニュースがありました。
ソニーが輝いていたのはウォークマンあたりまでで、それ以降は過去の栄光にしがみついていたという感じでした。
おそらく、日本の電機メーカーがこれから復活することはないでしょう。
EMSのような製造に特化することもなく、シリコンバレーのベンチャーのように新しいビジネスに挑戦するわけでもない中途半端な企業はグローバル経済で淘汰されていくしかありません。

そのかわりに、これから未来があるとすれば個人だと思います。
最近のメーカーブームや一人家電メーカーなど個人でも何か作って売ることができるようになってきました。ArduinoやRaspberry Piなどの安価なマイコンボードとLinuxやPythonなどのオープンソース・ソフトウェアを組み合わせれば、多額の初期投資をしなくてもいろんな製品プロトタイプを作ることができます。
そして、量産する場合はEMSに作ってもらえばいいでしょう。
(現在、EMSに依頼するにはかなり数がまとまらないと受けてもらえませんが、3Dプリンタなど製造技術が進めば少量多品種生産するEMSも出てくるものと思われます。)
おそらく未来のメーカーは個人がそういうものを利用して製品を作る中から出てくるでしょう。

私も中学生のころは、アマチュア無線をやったり電子工作をするのが好きな電気少年でした。
しかし、受験勉強に追われるようになって次第にやらなくなってしまいました。
最近、またその頃の気持が蘇ってきて、秋葉原のパーツ屋に通うようになりました。
これから日本を再び電子立国にするには作る喜びを多くの人が取り戻すことが大事なのではないでしょうか。

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